新NISA制度の有効活用(2)

4.贈与の活用

 今回の税制改正大綱で、暦年贈与は相続財産に加算される期間が3年間から7年間に大幅に増えました。来年1月からスタートし、毎年1年づつ年数が増え、令和13年から7年間分の贈与が寄り戻しされます。結論として、令和8年までの4年間が暦年贈与のラストチャンスとなります。特に、相続人でない孫への贈与は相続財産に加算されません。310万円の贈与にかかる税金は、最低税率10%適用の20万円です。成人している子供の新NISA口座に活用すると感謝されます。

5.2025年問題に注意

 皆さん、2025年問題をご存知ですか?2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人の700万人が認知症になると予測されています。認知症は法的な死であり、家族であっても預金の引き出しや株・不動産等の売買ができなくなります。現行の成年後見制度は、本人を守ることが法の目的で、財産が減らない様最低限の現金使用しか認めず、使い勝手が悪いので不評です。両親が元気なうちに対策をしましょう。

  • (1)家族信託の活用
     まずは公証人役場で契約書を作成してもらいます。基本料金は3万円前後で、信託財産3億円でも95,000円程度です。しかも契約書完成までは相談料は不要です。通常では2回目の訪問で終了となります。
  • (2)法務局で登記
     信託財産に不動産が含まれている場合は登記が必要です。法務局への登録免許税は3万円程度です。別途、司法書士への支払いが発生しますが、固定資産税評価額の1%が相場となっています。
  • (3)銀行口座の開設
     家族信託契約書に記載した現預金を預かる信託用の口座を作る必要があります。以前は信託銀行でのみ口座開設ができましたが、今は子供名義であれば普通の銀行の口座が使えます。なお、信託銀行では3,000万円以上の預け入れを勧められるようです。
     認知症になってから慌てても後の祭です。本人が亡くなると銀行口座は閉鎖されますが、死亡後の入出金ができます。

6.むすびにかえて

 政府は新制度施行後5年間でNISA口座数を1700万から3400万、NISA買付額を28兆円から56兆円に倍増させ、中間層の国民を育てることを目指しています。資産所得倍増プランを形にしたものが新NISAだといえます。他方、現行のNISAは金額も少なく使い勝手も悪かったので、筆者自身活用していませんでした。昨年あたりから光熱費・食料品の値上がりが続き、日本もいよいよインフレ時代に入りました。新NISA制度が国民に浸透した後に現行の税率を20%から30%へ引き上げるのではないかとの憶測も流れています。結論として、富裕層に対する締め付けは年々厳しくなる一方なので、今回の制度は大いに活用しましょう。ただし、リスクもありますので、非課税枠を今年中に確保しておくことと、よくわからない投資商品には手を出さないようにしましょう。