2月1日、大阪国税局桜美会と当局との定例会が開催されました。堀内斎大阪国税局長から税務行政の現状と課題をテーマに講演がありましたので、ポイントをレポートします。
e-Taxは平成19年にスタートし、申告書や法定調書、申請等の諸手続きをインターネットを利用して送信可能となりました。最新統計(令和4年)によると、利用率は、法人税申告91%、所得税申告66%、相続税申告30%です。利用率の低い相続税を40%に引上げる旨示されました。
令和5年度の大阪国税局の職員数は約8,700人で全国2位、うち4人に1人は女性職員です。定員は平成9年をピークに年々減少しています。逆に近畿税理士会の登録者数は増えており、令和5年4月1日現在で15,217人が登録しています。
税務署の事務年度は7月1日~6月30日です。例年7月10日に人事異動の発令があり、夏休み明けから税務調査が始まります。令和2年4月からの新型ウィルス拡大による経済活動自粛で税務調査の件数は激減しましたが、昨年8月位から税務調査件数は元に戻りつつあり、私自身も調査の立ち合いで忙しくなっています。ただし、コロナ禍でも相続税調査は多く実施されたようです。
国税当局は、税務手続きのデジタル化とデータ活用により、税務行政のデジタル・トランスフォーメーション(デジタルを活用した国税手続や業務の抜本的な見直し)に取り組んでいます。目指すゴールは多様な税務手続等が税務署に行かずにすむ社会の実現です。すなわち (1)納税者の利便性の向上 ①申告(納付・還付)、年末調整の簡素化 ②諸申請手続の簡素化 ③税務相談の高度化と検索機能向上 (2)課税徴収事務の効率化と高度化 ①AI・データ分析の活用 ②オンラインツール等の応用 狙いは租税回避、特に大口悪質事案と富裕層の適正課税のようです。
経済の国際化による税務環境の複雑化で、税務調査も、従来のマンパワーに頼る方法から、デジタルデータの収集とその活用に重点を移そうとしています。具体策として (1)内部事務のセンター化の推進 税務署に行かれた方ならわかりますが、1階で事務をしている人の姿が消えつつあります。 (2)システムの高度化、人材採用等のインフラ整備 今年1月から、電子帳簿保存法が中小企業においても適用されるようになりました。昨年10月からのインボイス制度のスタートと共に、取引情報をやり取りしたデータを保存することが求められています。昨年からは、デジタル技術の高度化に対応できる人材として、理系の大卒採用を開始しています。 (3)AI・データ分析の活用 申告漏れの可能性の高い納税者の選定にAIが活用されつつあります。 さらに、大企業を中心に、税務調査時に本社・工場等へ出向かないリモート調査をスタートさせています。
現在、106ヶ国の報告対象国と非居住者の金融口座情報を交換し、積極的な活用を図っています。大阪国税局において、国際課税専門官を主要税務署に配置しています。
国は2021年にデジタル庁を設置し、着々とデジタル化を推し進めています。近い将来、全国民の財産がガラス張りになると思います。 さて、自民党の裏金事件が世の中を騒がせています。法律を作る人間が長年の慣行といって法令違反を組織ぐるみでやったことは到底許させることではありません。会計が不透明なところでは不正が横行することを、歴史は教えています。宗教法人も然りです。公明党に配慮したからか、いつの間にか統一教会の事件も有耶無耶になりそうな気配です。民間企業が裏金を作ったことが判明すれば重加算税が課され、国税局の告発があれば10年以下の懲役刑が科されます。一方、政治家の政治資金は、報告義務が課されていても、政治家が亡くなっても相続税の対象とはならず、後継者にそのまま引き継がれます。これが日本の政治家に二世・三世議員が多くはびこり、政治家としての資質の劣化が生じている主因です。この際、政治資金規正法を抜本的に見直して、現金の授受の禁止、収支報告書の透明化で、国民の監視ができるようにすべきです。国政劣化のツケが国民一人ひとりに降りかかってくることを、懸念しています。
1.はじめに
2月1日、大阪国税局桜美会と当局との定例会が開催されました。堀内斎大阪国税局長から税務行政の現状と課題をテーマに講演がありましたので、ポイントをレポートします。
2.e-Taxの利用率
e-Taxは平成19年にスタートし、申告書や法定調書、申請等の諸手続きをインターネットを利用して送信可能となりました。最新統計(令和4年)によると、利用率は、法人税申告91%、所得税申告66%、相続税申告30%です。利用率の低い相続税を40%に引上げる旨示されました。
3.大阪国税局の定員
令和5年度の大阪国税局の職員数は約8,700人で全国2位、うち4人に1人は女性職員です。定員は平成9年をピークに年々減少しています。逆に近畿税理士会の登録者数は増えており、令和5年4月1日現在で15,217人が登録しています。
4.税務調査の件数
税務署の事務年度は7月1日~6月30日です。例年7月10日に人事異動の発令があり、夏休み明けから税務調査が始まります。令和2年4月からの新型ウィルス拡大による経済活動自粛で税務調査の件数は激減しましたが、昨年8月位から税務調査件数は元に戻りつつあり、私自身も調査の立ち合いで忙しくなっています。ただし、コロナ禍でも相続税調査は多く実施されたようです。
5.税務行政の将来像
国税当局は、税務手続きのデジタル化とデータ活用により、税務行政のデジタル・トランスフォーメーション(デジタルを活用した国税手続や業務の抜本的な見直し)に取り組んでいます。目指すゴールは多様な税務手続等が税務署に行かずにすむ社会の実現です。すなわち
(1)納税者の利便性の向上
①申告(納付・還付)、年末調整の簡素化
②諸申請手続の簡素化
③税務相談の高度化と検索機能向上
(2)課税徴収事務の効率化と高度化
①AI・データ分析の活用
②オンラインツール等の応用
狙いは租税回避、特に大口悪質事案と富裕層の適正課税のようです。
6.実現への方策
経済の国際化による税務環境の複雑化で、税務調査も、従来のマンパワーに頼る方法から、デジタルデータの収集とその活用に重点を移そうとしています。具体策として
(1)内部事務のセンター化の推進
税務署に行かれた方ならわかりますが、1階で事務をしている人の姿が消えつつあります。
(2)システムの高度化、人材採用等のインフラ整備
今年1月から、電子帳簿保存法が中小企業においても適用されるようになりました。昨年10月からのインボイス制度のスタートと共に、取引情報をやり取りしたデータを保存することが求められています。昨年からは、デジタル技術の高度化に対応できる人材として、理系の大卒採用を開始しています。
(3)AI・データ分析の活用
申告漏れの可能性の高い納税者の選定にAIが活用されつつあります。
さらに、大企業を中心に、税務調査時に本社・工場等へ出向かないリモート調査をスタートさせています。
7.海外税務当局との情報交換
現在、106ヶ国の報告対象国と非居住者の金融口座情報を交換し、積極的な活用を図っています。大阪国税局において、国際課税専門官を主要税務署に配置しています。
8.むすびにかえて
国は2021年にデジタル庁を設置し、着々とデジタル化を推し進めています。近い将来、全国民の財産がガラス張りになると思います。
さて、自民党の裏金事件が世の中を騒がせています。法律を作る人間が長年の慣行といって法令違反を組織ぐるみでやったことは到底許させることではありません。会計が不透明なところでは不正が横行することを、歴史は教えています。宗教法人も然りです。公明党に配慮したからか、いつの間にか統一教会の事件も有耶無耶になりそうな気配です。民間企業が裏金を作ったことが判明すれば重加算税が課され、国税局の告発があれば10年以下の懲役刑が科されます。一方、政治家の政治資金は、報告義務が課されていても、政治家が亡くなっても相続税の対象とはならず、後継者にそのまま引き継がれます。これが日本の政治家に二世・三世議員が多くはびこり、政治家としての資質の劣化が生じている主因です。この際、政治資金規正法を抜本的に見直して、現金の授受の禁止、収支報告書の透明化で、国民の監視ができるようにすべきです。国政劣化のツケが国民一人ひとりに降りかかってくることを、懸念しています。