年収のカベ問題にひとこと

1.はじめに

 衆議院議員総選挙で自民党が大敗し、国民民主党が大躍進した結果、連日103万円のカベ問題がマスコミをにぎわせています。働き方改革をふまえて深掘りしてみます。

2.6つのカベ

 調べてみると、実は6つのカベがあることがわかります。

  • ①100万円のカベ 住民税の課税が始まる
  • ②103万円のカベ 所得税の課税が始まる
  • ③106万円のカベ 社会保険への加入が始まる
  • ④130万円のカベ 扶養から外れる
  • ⑤150万円のカベ 配偶者控除が減少する
  • ⑥201万円のカベ 配偶者特別控除が減少する

 玉木代表は「103万円を178万円に引き上げる」ように要求しました。103万円の中身は基礎控除48万円と給与所得控除55万円の合計額です。彼は30年前の最低賃金が今や1.7倍になっているので、控除額も1.7倍に増やして178万円にしろと主張しましたが、税制改正大綱で123万円に引き下げられました。20万円プラス分の内訳は基礎控除10万円と給与所得控除10万円だけでした。

3.問題の本質は?

 ①~⑥のカベごとに手取り額をシミュレーションすると、もともとの年収が低いので、影響が大きいのは税金よりも社会保険料です。わかりやすく示したのが次の表です。
 全員の社会保険加入が義務付けられた従業員51人以上の会社で働く人の場合、年収が130万円を超えると社会保険料の支払いが発生し、手取りが減って働き損となる為、労働時間を調整するのが130万円のカベです。さらに30万円程多く稼いで年収160万円位になるとようやく手取りが増えます。斜線で示した部分の取扱いが問題を解くカギとなります。

4.むすびにかえて

 そもそもいくつものカベがある事自体が問題であり、国民の理解をより難しくしています。特に、社会保険の加入義務が年収の低い非正規社員には適用されないのは、社会保険の一部に税金が補填されていることを考慮すると、働き方や所得による差別といえます。
 共働きが一般的になった今、収入を得ている専業主婦(夫)が基礎控除と配偶者控除を受けるのは不公平であり、扶養のあり方を根本的に見直す時期にきています。さらに、日本の基礎控除は他の先進国と比較すると低いことがわかります。日本が48万円のところ、米国は61万円、独43万円、仏160万円、英国214万円です。財務省は7.6兆円の財源が必要だと反対していますが、円安による税収の自然増で充分賄える額です。今や人手不足の時代、カベを取り払って働き控え働き損を解消すべきです。これが年収のカベの本質といえます。また、税金と社会保険は違います。保険加入は税金により補填され必ずリターンがありますので、働ける間は手取りを増やして、安心して暮らせる世の中を作るべきだと考えます。